引っ越し[洒落怖]
オレが小学生のとき、
親父が家を建てた。
念願の一軒家で家族皆喜んだ。
しかし引っ越し後ほどなくして
女の幽霊が出るようになった。
俺は見たことがないのだが、
両親は深刻になやんでおり、
特に母は気を病んでしまい、
家は大変だった。
そんななか、
正月にはじめて家に来たおじいちゃんが、
家に入るなり、
「○○さん(親父の名前)、
滅多なところに家を建てるもんじゃないよ」
と言った。
おじいちゃんは居間に神棚を作り、
かんぴょうを天ぷらにしてそこに供えた。
そして供え物を絶やさないように告げ、
帰っていった。
以来、家は幽霊に悩まされることはなくなった。
ただ、そのかわり
おじいちゃんの家に幽霊が現れるようになったらしい。
おじいちゃんは、
「独り暮らしだし、
寂しさが紛れて案外いい塩梅なんだよ」
と語っていたが、
その後程なくして
心臓を痛めて急に亡くなってしまった。
ささやかな葬式だったが、
その際、見知らぬ怪しい女が
式場をうろうろしているのを
親父含め数人が目撃している。
これは俺の予想だが、
おじいちゃんはその幽霊と恋仲になり、
添い遂げたのではないか。
式の後、
おじいちゃんの家を片付けにいったのだが、
独り暮らしとは思えない様子だった。
部屋には花やぬいぐるみ、
風景写真がたくさん飾られてあった。
中でも印象的だったのは、
誰かと筆談していたかのようなメモ書きが、
部屋のあちらこちらに残されていたことだ。
内容は、
テレビ面白い?とか、
もう寝るか、とか他愛のない一言だった。
おじいちゃんはボケてはいなかった。
あれは一体なんだったんだろう?
幽霊話はおじいちゃんの死後、
どこからも聞かなくなった。